2.抱きしめる
寝起きのブローノは、目の見えないけもののようだ。低血圧の彼の身体は起動までにとにかく時間がかかるようで、一緒に同じベッドで眠るようになってから知った寝起きの姿は、昼間のいつでも堂々とした彼の姿とは結びつかないくらいだった。ぎゅうっと眉を寄せ…
5部夢
1. 手をつなぐ
「……今日、は……手を繋いで、おでかけしませんか」デートの待ち合わせ場所に現れると同時に、握手を求めるように彼に向かって片手を差し出す私を、ブチャラティは不思議そうに見つめていた。私たちは側からみればまるで恋人同士には見えないくらい、節度あ…
5部夢
その名は希望 -2-
あの雨の晩からしばらくして、あいつは、あるトラットリアで下働きをはじめた。そしてそこのオーナーのとりはからいで店の上の空き部屋を借り、今はそこで暮らしている。 結局、オレの家であいつが寝泊まりしたのは二週間かそこらだった。オレとしてはいつ…
5部夢 その名は希望
ベチバー
「……あれ、ブチャラティさん……香水、変えたんですか?」はじめて彼女と一夜をともにした日の朝、オレが隣に眠ったままの彼女を起こさないようにベッドを抜け出し、シャワーを浴び、髪を編み、服を着込んですっかり仕事に向かう準備を整えたところでようや…
5部夢
ひみつ
授業中、誰よりも近い背中は、授業が終わってしまえばいつだって誰より遠い。授業の終了を知らせるチャイムとともに、魔法は一瞬で解けるのだ。一番の前の席に座っているなんて、ブチャラティ先生の国語の授業以外では何にも嬉しくないアドバンテージも、チャ…
5部夢
その名は希望 -1-
何ともなしに、人の活気が浴びたくなることがある。それも、酒の匂いがしない、健全なやつだ。それはだいたい、徒労を感じる仕事のあとであることが多かった。長く埃っぽい、ケツが痛くなるだけの憂鬱なドライブの末、偵察に行った先でこっちがヤキ入れる前…
5部夢