5部夢

rivedersi

ブローノ・ブチャラティの誕生日、それはブチャラティ本人には『静かに過ごす』という選択が許されない日だった。まず同じチームの部下たちが騒いで祝い、彼らの騒ぎを聞いた街の人間たちはプレゼント代わりにいろんなものを持たせてくる。その積み重ねで、い…

エコー

※モブに対する暴力描写があります/「……ほお、冷凍庫の中に隠れるっつうのは、なかなか考えたな」ブチャラティは、白い棺のような四角の箱――横たわる巨大な冷凍庫に取り付けたジッパーを引き、開いたその中を覗き込んだ。打ち捨てられた工場の跡地だ、電…

スイングバイ

仕事の後、チームの奴らでメシなんか食いに行くことがある。自分が再び他人と食事をする日が来たという事実に、不思議な気持ちになったりもする。ブチャラティはともかく、ガキみてぇな年のやつらとテーブルを囲んでいるとなると、余計に奇妙な感覚だった。今…

水先人

手についた血と土を、タオルで歩きながら拭う。その汚れのほとんどは自分のものではない。乾いてしまったそれはかさかさのタオルで拭いたところでろくに落ちやしなかった。強くごしごしと自分の手にタオルを押し付け続ける私の目の前に、水のボトルが差し出さ…

Eccomi qua!

「ただいまー!」普段は無言でひっそりと後ろ手にドアを閉めるだけの、ひとりで住む自分の部屋に帰ってきてこの挨拶を口にできるのが嬉しい。今日はわたしの部屋にブチャラティが来ているのだ。ここのところずっと忙しかったのにわざわざ来てくれた彼をお昼の…

潜熱

※ブチャラティ夢ですが、このお話は片思いのターン&ミスタとの距離近…というか未遂シーンがあります(not 恋愛感情) 倫理観が若干ギャングみがあるかもしれないので色々注意///「泊っていく? うちでよければ」ブチャラティに向かって初めてにそ…

Il regalo perfetto

去年までは、恋人たちがあつまるレストランも、彼らが見つめあって座る公園のベンチも、何もかもが私からは遠いものだった。なぜなら私はギャングなんかやってる女で、……同じギャングの上司に片思いなんかしていれば、そんなものは遠くて当たり前だったのだ…

Scegliamo

「ブチャラティの誕生日っていつ? ねー、パーティーとかやらないの?」そう聞いてきたのは、いつかのナランチャだった。オレのチームのメンバーも、最初に加入したフーゴに続いてようやくあいつで三人目、まだ、そんなぐらいの頃の話だ。ナランチャからする…

“Tango” – A girl

「……ぅう、あ……ぐ、ううぅううぅ」 眠りながら、……いやこれは眠っているなんて穏やかなものではない。意識を失ったまま、唸り声をあげる彼をベッド脇に置いた椅子から眺めている。 私は、わかっているつもりになっていた。彼が生きる世界のことを。で…

“Passo veloce” – Mista

「……ブチャラティ! ックソ!」 叫びながら駆けつけたオレの視線の先、地面にぶっ倒れたその姿はすぐに見つかった。白いスーツが闇の中でぼんやりと浮かび上がっている。歯を食いしばりながら、ほとんどつんのめるように勢いよく地面を踏みしめブチャラテ…

“Blues” – Abbacchio

 二人であたった初めての任務で、車に乗って遠出するとなった時。……半分昔の職業病で当たり前の様に運転席に乗り込んだオレを見て、ブチャラティは一瞬だけ目を丸くしてから、柔らかく笑って「そうだな、オレよりずっと運転がうまいよなきっと、お前は」そ…

“Paso doble” – Bucciarati

これは、腐臭だ。 潮の匂いに混じって鼻に届く生臭い死の匂い。港の端、淀むばかりで流れも波も発生しないコンクリートで固められたこの場所で、海は腐る。 接岸する巨大なタンカーの背から、吊り下げられたコンテナがゆらゆらと揺れながら地上に下ろされる…